ヒロセ・コサック

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【軽くネタバレ】愛とテロと革命『蒼ざめた馬』(ボリス・サヴィンコフ著)レビュー

まず、一つ言っておきたいのは、僕が読んだ「蒼ざめた馬」の原題は「Конь бледный」、作者はロシア革命家ボリス・サヴィンコフだ。アガサ・クリスティの同じ題名の小説と間違えないように注意してください。

『蒼ざめた馬』はボリス・サヴィンコフの自伝的な小説である。日記の形で、ある年の3月から10月までの、モスクワ総督の暗殺をめぐって、準備から結果とその影響までの出来事を語った。本を語る前に、まず作者となるサヴィンコフを語らなければならない。サヴィンコフは社会革命党のテロ組織である戦闘団の指導者、帝政ロシアの高官の暗殺と関わった。二月革命の後、暫く臨時政府に働いたが、コルニーロフ事変と関わったので、政府に解任され、社会革命党にも除名された。十月革命の後、新たな政党と武装を組織したが、共産党に鎮圧され、海外に逃亡した。ちなみに、最近、hearts of iron4という第二次世界大戦をシミュレーションするゲームのkaiserreichという架空歴史のmodに、サヴィンコフは白軍が勝利したロシアの統治者になれる。このmodのおかげで、サヴィンコフは革命の100年後再び人気になって、redditなどのネットコミュニテーでmemeになった。

閑話休題。作者の経歴を見ただけでも、この本がテロリストの心を理解するために最適な作品であることを分かっていただけるでしょう、ましてやこの物語は多分モスクワ総督セルゲイ大公の暗殺事件に基づいたもの。21世紀の今となって、テロはもはや純粋たる悪と過激なイデオロギーの象徴にほかならないから、テロリストの思いを知りたい方は多分多くないと思う。しかし、19世紀と20世紀の前半においては、テロは立派な革命闘争の手段の一つであった。あの時代のテロは今と違って、敵の高官を暗殺するのが主流であった。暗殺は革命を宣伝する手段だけじゃなくて、敵に恐怖を感じさせ、そして改革を推進することもテロの効果として期待された。土地社会主義とロシアのポピュリズムの化合物である社会革命党も、テロと議会闘争を同時に行うという方針に従った。

【WARNING】これからネタバレが入っている

本には、主人公である「私」の部下ワーニャ、フョードル、ハインリッヒがテロに身を投じた理由をそれぞれ持っている。ワーニャが宗教を信じ、世間の人々を愛している。本の前半では、彼はよく宗教で自分のテロ行為を弁解していた。フョードルは労働者階級を愛し、敵対階級を強く憎んでいた。そしてハインリッヒは革命の理想を信じて、革命同志のエルナに対する愛のため、テロを参加した。

しかし、「私」だけが、他人の妻であるエレーナ以外誰も愛していない、何も信じていない。ただ合理的に、冷酷に任務の完遂を考え、同志が犠牲したときも、何の感情的な変化もなかった。任務が完遂したときさえ、大した喜びを感じなかった。そのゆえ、「私」は常に何のためにテロ、何のために殺しと考え続けた。

「私」の困惑はやがて、エレーナの夫と偶然に出会い、そしてエレーナのために決闘する際に激化してしまった。「私」は決闘した時エレーナの夫を殺すことによって、はじめてテロ以外で人を殺した。「何のために人を殺すという今まで「私」に「テロのためだ」でごまかした問題が、到頭回答しなければならなかった。自分のための殺人とテロのための殺人と祖国のための殺人に、一体何の違いがあるか。その境界もまた、どこにあるか。愛もう信じるものもない主人公には、答えられなかった。更に、これらの問題を考えると、今まで正当化したテロのための殺人の正義性も動揺し始めた。こうして、答えが見つからないままの主人公は、次の暗殺に頼まれた。限界に達した主人公はやがてこの頼みを拒んで、ネワ河の岸で拳銃を自分に向いた。

結局、主人公は最後までも答えをはっきり言えなかったが、本を読んだら、多分その答えがすぐ見つかれると思う。革命、そしてテロをやる際に、愛と信仰がなければならない。正しい愛と信仰なしには、正しいテロを行うことができない、殺人も単なる虐殺に堕ちり、こうなると、革命も必ず失敗するでしょう。主人公は暗殺する計画を練る際に、総督の屋敷を丸ごとに爆弾で吹き飛ばして、女房も子供も全部一緒に葬ると考えた。幸い、この計画はワーニャに止められた。

僕は決してテロに弁護するわけがないが、偉大なるテロリストたちは、往々にして大いなる愛を持っている。安重根朝鮮民族を深く愛し、サヴィンコフもロシアの農民を強く愛している。テロリストはただの社会に適合しなかったゴミくずっていう21世紀のマスコミによるプロパガンダは、あまりにも偏りすぎると思う。特に歴史を読む際に、決してこのプロパガンダを持ち込んではいけないと思う。

 

最後、僕はサヴィンコフや社会革命党についてウィキペディアほどの知識しかありません。もしこの記事に何か誤った所がありましたら、ご指摘いただくと幸いです。